俺様上司と身代わり恋愛!?
乱雑に積み上げられている段ボールは、時間的に片っ端から全部整理できるわけでもないし、第一、預金課の書類以外は下手に触らない方がいいからと、とりあえず預金課の棚の前に移動し、ひとつ目の段ボールに手をかけた。
中に入っているのは、一日ごとに製本している伝票……恐らく五十冊弱。
上下左右関係なくごちゃ混ぜに入ってしまっているけれど、きちんと揃えて入れればもう少し入るハズだと、それを取り出し整理していると、カタンと出入り口のあたりで音がした。
見ると、入ってきたのは桐崎課長だった。
「何か探し物ですか?」と声をかけると、課長は「二年前の伝票でちょっとな」と答え、私の数歩隣に並び、違う段ボールを取り出す。
こうして書庫に調べものに来ることは珍しくはない。
週に数回は普通にあるし、他の課も同じだと思う。
普段使っているオフィスに置いておくのは限りがあるから、ここに移してはいるけれど、直近のモノなんかは特によく確認しに書庫にきたりする。
「サンウェルの大澤さんが、二年前に会計を担当してた人の筆跡を見たいとかで電話寄こしてきた」
段ボールを床に置くと、桐崎課長はその前にしゃがみ段ボールの中をゴソゴソと漁りながら言う。
邪魔にならないようにか、ネクタイの先をYシャツの胸ポケットに差し込んでいた。
「どうも使途不明に引き出されたっぽいらしい」
「え……っ、横領とかそういう……?」
「いや、本当かどうか分かんねーけどな。そんな大きい企業じゃないし、誤魔化せるとは思えない」
「多分、大澤さんの勘違いだろ」と言いながら製本された伝票の日付を確認する桐崎課長に、「ああ……なるほど」と苦笑いを浮かべた。