俺様上司と身代わり恋愛!?


社内の人間だという事は秘密にして、その内容だけをさらっと話すと、桐崎課長は呆れたような顔をした。
この話をした時、大体の人間が浮かべる顔だ。

「それ、最低のダメ男だな」

今しがたダメ男なんじゃという考えが浮かんだ本人に、ハッキリと言われ思わず苦笑いをもらす。

しかも、目の前のダメ男が偉そうに続ける。
「まぁ、俺はそういうのが面倒だから最初から付き合わないんだけど」と。

〝そういうの〟とは、きちんと別れるというけじめを指すんだろう。
一度付き合い始めてしまったら別れる時もろもろと面倒だから最初から付き合わないと、そういう事だ。

……そう考えると、桐崎課長の付き合い方はそれなりに理に適っているのかもしれない。
課長の相手も、そんな都合のいい時だけの、表面上の付き合いで納得しているんだとしたら、私が文句を言うものでもないし。

少なくとも、別れのメールも無視するような男と比べれば、最初から思わせぶりな付き合い方をしない分、課長の方がマシに思えてきて、ダメ男呼ばわりした事を心の中でこっそりと謝罪する。

いい大人が何やってんだと思ってしまった事もごめんなさいとついでに謝った。

「でも、付き合ってる時から、他に誰かいるんだろうなぁっていうのはあったから、別れられてスッキリしました。
その彼に対しては、友達もみんな口をそろえて別れろっていうし、それを聞いて、はたから見ると本当にひどい男なんだなぁとも思ってたし」
「周りに言われるまでもなくひどい男だろ。
別れる前、音信不通になってからどれくらい連絡待ってたんだよ」

「三ヶ月くらい」と答えると。
課長はたっぷりと五秒近く絶句した後、眉を寄せた。眉間のシワが怖い。


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