俺様上司と身代わり恋愛!?


この位置から見えるのは頭のてっぺん付近だけだけど、きっとその下には面倒くさそうな表情があるんだろうなと想像がつく。

そういう見えない部分が安易に想像できて、それにクスリと笑みを浮かべたくなる自分に気づいて、小さな疑問が浮かんだ気がした。

さっきの変な感情の込み上げといい、このもやもやした気持ちはなんだろう……と首を傾げたくなった時、入口あたりで足音が聞こえてきた。

もしかしたら高橋さんが何か分からない事があってとかかな、と思い、棚から顔を出すと……「あれ? 茅野さん」と志田さんが笑いかけるものだから、心臓が跳ねる。

「志田さんも書庫に用事ですか?」
「うん。また印鑑票をね。茅野さんは?」
「今日は割と手が空いてるので伝票の整理でもしようかと思って」
「ああ、なるほど」

苦笑しながらそう答えるって事は、志田さんも伝票の入った段ボール内が荒れていた事には気づいていたのかもしれない。

伝票は融資や営業も使うモノだけど、管理はなんとなく預金ってなっているから、もう少し気を配った方がいいのかもしれないなと思う。

せめて日付くらいはきちんとしておかないと、今みたいに探し回る羽目になってしまうし、それを他の課の人にさせてしまうのは申し訳ない。

そんな風に考えていると、印鑑票を探しながら志田さんが「そういえば昨日、預金課がお祝いしてたらしいけど、なんだったの?」と聞く。

お祝い?と首を傾げてから、ああ……と昨日の事を思い出し笑った。


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