俺様上司と身代わり恋愛!?
「実は、ずっとうまくいってなかった後輩が私の事を初めて先輩って呼んでくれたので……それで、ちょっとしたお祝いムードになって。
あ、すみません。もしかしたらうるさかったとかそういう……」
「それは全然。ただ、預金課の前通った人が、なんか珍しい感じだったっていうから気になっただけ。
その後輩って、前言ってた子だよね?」
「はい」
「よかったね」
視線をこちらに向けて微笑んでくれた志田さんに「はい」と私も笑顔で答える。
「私が八方美人のせいでイライラさせちゃう事はこれからもあると思いますけど……でも、少しは前進したかなって」
苦笑いを浮かべながら言うと、志田さんは何か引っかかったような顔をした。
「前も思ったんだけどさ、八方美人って言っても、誰にでも優しいってだけでしょ?
それって短所ってわけじゃないと思うんだけどなぁ」
フォローされたくて言ったわけじゃなかったけれど。
結果的にそうとらせてしまったのだろうかと「すみません。励ましてもらいたくて言ったわけじゃなくて……」と焦る。
志田さんは「違う違う。俺がただ言いたいだけ」と笑った。
「俺は、嫌な事でも笑顔で流せるとか、みんなに優しくするとか、そういうのは長所だと思うから」
「そう……ですかね」
今までの……例えば今野さんに言われた事や、これまで周りに言われてきた事から考えれば、私のそれは決して長所ではないと思う。
そういう部分にイライラされてしまうのだって、今野さんに限っての事ではないし、大学時代にだってあった。
〝いい子ぶってる〟と言われてしまう事は、さかのぼれば中学の頃だって何度かあった。
だから、決して長所だとは思わないけど。
少なくとも志田さんには嫌な思いをさせていないんだと分かり、「ありがとうとざいます」と微笑んでお礼を言う。