俺様上司と身代わり恋愛!?
「いや、思った事を言っただけだから。……あ。あったあった。あー……これも写りが微妙だなぁ」
お目当ての印鑑票を抜き取った志田さんが、印鑑の写りに眉を寄せる。
それから私を見て、「あ」と小さく声をもらしてから、胸ポケットから名刺を取り出す。
そしてその裏に何かを書いてから私に差し出した。
「土曜の事、時間だとかは連絡してくれる?」って。
見ればそこには志田さんの携帯番号が書かれていて……驚いて見上げると、志田さんは「じゃあね」と微笑み、書庫を後にした。
志田さんが出て行くのを見ながら、なんてスムーズなんだろうと感心する。
こんな風に突然会ったにも関わらず、こんなスムーズに携帯番号を渡すなんて……。
っていうか……志田さんの番号ゲット……。
「ナンバーツーの携帯番号とか……」
恐れ多くてもらった名刺をただ眺めていると。
「ナンバーワンが頼んだ仕事はどうした」と、棚の向こうから声が聞こえてビクッと肩がすくんだ。
「なんで俺が気を遣って静かにしてなきゃなんねーんだよ」
やれやれと言った風に言う課長に、「すみませんっ!」と謝る。
課長の存在と頼まれた伝票探しをすっかり忘れていた。
「今すぐします」
慌てて段ボールを覗き込もうとすると「もう見つかった」と返される。
通路を出て課長がいる場所を覗き込むと、課長は確かに手に三冊の製本を持っていた。