俺様上司と身代わり恋愛!?
「えっと、無類の女好きだったり、お財布から勝手にお金を抜き取る人だったり、怒ると暴力的になったりギャンブルに……」
「……もういい」
ダメさの羅列を途中で片手を上げて遮った課長に、「そうですか?」と首を傾げてから話題を戻す。
「で、どう思いますか? 志田さん」
融資課の志田さんは社内に人気を誇る、入社四年目の男性社員。
長すぎない髪に中性的な甘い顔立ち、細くすらっとしたスタイル。
性格は温和で優しいってみんなが噂しているし、問題はなさそうだ。
性格がにじみ出たような爽やかな笑顔に撃ち抜かれた女性社員も少なくないらしいし、現在も撃ち抜かれたままの人も多いって話だし。
「志田ねー……まぁ、いいんじゃないか? 仕事も真面目そうだし、浮いた話も聞かないし。管理職のなかでも仕事の評価は高い」
顎のあたりを触りながら視線を宙に浮かせて答える課長に、「本当ですかっ?」と食いつく。
私があまりにテンションを上げたからか、いささか迷惑そうに顔をしかめられてしまったけど関係ない。
「本当ではあるけど……なんでそんなに舞い上がってるんだよ」
「え、桐崎課長がそう言うなら狙ってみようかと思って」
「狙うって……やっぱり男に飢えてんじゃねーか」
「だって、早くしないとまたいつものパターンにはまりそうで」
そう言うと、課長が「ダメ男ループって事か?」と聞くから頷く。
「なんでだか、そういう人ばかりが告白してきてくれるんです。
で、好きな人もいないし、私の事好きになってくれたんだし……って付き合うと次第にダメな要素を発揮され始めてっていうループに」
高校一年の時からそのループは始まっているから、考えてみれば私は自分から好きになった人ってひとりもいない。
中学の頃、憧れみたいなモノはあったけれど、それは恋とは違ったから。