俺様上司と身代わり恋愛!?
「本当に今更だよね。勝手に浮気して勝手に音信不通になって、別れようってメールにも返事してこなかったんでしょ? それが、自分が周り誰もいなくなったからって……。
ゆず、絶対に甘い顔しちゃダメだからね。ちゃんときつく断らないとどんどん付け込んできちゃうよ」
「大丈夫だよ。さっきももう連絡してこないでって言ったし」
そう言ってから、あれ?と思う。
連絡してこないでって言ったのに連絡してこられてる事に気付いて。
そんな私に、美絵は眉を寄せたままため息を落とした。
「ゆずは態度が甘いんだよ。優しいから強く言えないの分かるけど、そういう人にはちゃんときつく言わないと。
ヨリ戻そうとか調子に乗られちゃうよ」
「……うん。気を付ける」
さっき、割ときちんとした拒否をしたつもりだったのに、こうして平気でメールを送ってこられちゃうんだから相当舐められてるのかもしれない。
まぁそもそも三ヶ月平気で放置されてる時点でそうなんだろうけど……付き合っていた時の関係性を考えれば仕方のない事かもなと思う。
「これだから三次元は」と嫌悪感を顔いっぱいに広げ言う美絵に。
もしかしたら美絵の二次元好きは、私のひどい恋愛遍歴を間近で見てきたからだろうか……と少し申し訳なくなって苦笑いを漏らしていると、美絵が「私もごめんね」とスマホを取りだす。
「ちょっと一件メール送ってもいい?」
「うん。全然」
いいよって言った途端に、凄まじい速さのフリック入力を始めた美絵に少し驚く。
いつだったか美絵のブラインドタッチの速さにも驚いた記憶があるけど……私の倍は速いと思う。
パパパッとものの数十秒でメールを打ち終わった美絵が、スマホをテーブルに置き私を見てにこりと微笑んだ。