俺様上司と身代わり恋愛!?
「どうかした?」
「ううん。ちょっとね。その元彼の話は頭にくるけど、でも、今日ゆずからいい報告されたから嬉しくてね」
「いい報告?」
したっけ?と、会話を遡ってみたけれど……これといって思い浮かぶものがない。
今日した会話と言えば、昨日の報告と次の約束の日程、それと伸介の話ぐらいだった。
その中にいい報告なんてあったっけ?と、やっぱり分からなくて黙っていると、美絵は「あれ? まだ無意識だった?」と笑う。
「ああ、でもそうよね。ゆずはいつも告白されてから好きになってたから、そういう意味じゃこれが初恋だものね。
無意識でも仕方ないか」
「無意識って……なにが?」
説明されてもわからなくて首を傾げる。
「ゆず、さっき課長さんと映画見た話とかしてた時、楽しそうな顔してたよ」
「それはまぁ普通に楽しかったから」
「高校からずっと一緒だから、ゆずの歴代彼氏は全員知ってるし、その人たちとどんなデートしたかも全部聞いてきたけど。
課長さんとの事を話してた時が、今までで一番幸せそうな顔してた」
確かに美絵は今までの元彼たちを全員知っているし、全員とのデート内容も別れ方も知っている。
いくらひどい彼氏たちでも、それなりの回数デートは行ってたし、楽しくもあったのに……。
その中で一番と言われて戸惑って……でも、そんなことないって反論が出なかったのは、実際に課長と過ごした時間が楽しかったからだろうか。
彼氏とのデートより、付き合ってもいない課長と過ごした時間の方が楽しかったなんてどうなんだろうと、そこにはさすがに疑問を感じながら苦笑いを浮かべる。
「なんか、今までのデートが楽しくなかったわけじゃないんだけど……やっぱり適当に扱われる事が多かったからかな。
もちろん、課長と自分が対等だなんて思ってるわけじゃないけど、少なくとも、どうでもいいって思われてないって分かるから……そういうのは純粋に嬉しいって思った」