俺様上司と身代わり恋愛!?


へへっと笑うと、今までニコニコしていた美絵は表情を崩して「不憫すぎる」ともらし……それから、スマホを確認する。

美絵は人と話している時、いつもスマホを気にしたりしない。
それはやっぱり育ちとかそういう事なのかなと思う。

食事をしている時はきちんと料理と会話だけに集中してくれるし、食事以外の時だって基本的に他に気を逸らしたりしない。

……まぁ、ちょうど美絵のはまっているアニメのガチャガチャの前とかを通りかかってしまった時を抜かして、だけど。

だから、こんな風に何度もスマホを気にするのは珍しい。
一体誰からなんだろうと思い眺めていると、また目を疑うスピードでフリック入力を終えた美絵がスマホを置き、微笑んだ。

「昨日のデートが楽しかったのって、きっと、相手が課長さんだったからだと思うけどなぁ」

「え」と声をもらした私に、美絵がにこりと目を細めて笑った。

「ゆず、課長さんの事が好きなんだと思うけどなぁ。……あ、ねぇ、課長さんってあの人?」

会話の前半部分の処理が終わらないうちに、身を乗り出した美絵にコソッと聞かれる。

何が何だか分からないでいる中、〝あの人〟と階段を上がった部分を指さされ、何事なんだと思いながら視線を移すと……そこには、こちらに気付いた課長の姿があった。

「え……課長だけど……え、なんで……?」

混乱する頭で、課長がなんでこんなところにいるのかを考える。
課長がファストフード店って……すごい似合わないしハッキリ言って違和感しかない。

まぁ……似合う似合わない関係なしに、課長がファストフード店で夕飯を済まそうとしてここにいるとして。
課長に会った事のない美絵は、なんで課長の顔を知っているんだろう。

不思議に思って見ていると、美絵が微笑む。




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