俺様上司と身代わり恋愛!?
「茅野は……もし、早乙女さんとの約束がなかったら尾関の誘いを受けてたのか?」
「……え?」
真面目な眼差しにどきりとしながら、聞かれた事を考える。
もし、美絵との約束がなくても、伸介の誘いなんて受けるつもりはなかった。
だから、真っ直ぐな瞳に戸惑いながらも「いえ、断りますけど……」と答えると。
課長は尚も真剣な表情を私に向ける。
「早乙女さんからメールで、腕を掴まれたって事も、連絡するなって言ったのにも関わらず直後にメールして誘ってきた事も聞いてる。
おまえは断ったつもりでも、尾関にはそれが伝わってないからメールが何度もくるんだろ」
「……すみません」
課長の強い口調に驚きながら謝ると、課長はなにかを言おうとして口を開いたあと、ハッとした顔をする。
それから、バツが悪そうな表情を浮かべ、目元を歪めた。
そして、指をくしゃっと髪に差し込む。
「いや……悪かった。俺が口を出す事じゃないのに」
謝る課長に「いえ」と首を振って続けた。
「私がちゃんとしてないのがいけないんですし……課長の言う通りです」
本心だった。
そもそも、課長の言うように私がしっかりしていないのがいけないのは重々分かっている。
さっきの伸介との事だって、断り方が甘かったからその後メールが送られてきちゃったんだし。
そう思い、だから課長が謝ることじゃないと言うと、課長はわずかに眉根を寄せ、少し黙り……「いや、そうじゃない」と目を伏せ言う。
「俺が今、口出ししたのは上司としてじゃなかった。だから謝ったんだ」
上司としてじゃない……その言葉を頭で理解できずにいると、課長が席を立つ。
「送る」
「え……あ、はい。すみません……」