俺様上司と身代わり恋愛!?
私が立ち上がったのを確認すると、課長がスタスタと歩いて行ってしまうから、慌ててその後ろを追う。
さっきの言葉は一体どういう意味だったんだろう。
それは気になったし、期待になのか胸がうるさかったけれど、課長はそれ以上話を続ける気はないようだった。
隣を歩きながらチラチラと見上げても、課長の視線が私に向く事はなかったから。
でも、それは当たり前だ。
ただの部下の色恋沙汰に巻き込まれて、仕事で疲れてるところを送らされてるんだから。
だから……さっきの言葉にはきっと、深い意味なんてなかったんだろうと気持ちを割り切り、未だ煩い胸をぎゅうっと押さえつけて落ち着かせる。
会社を出た時よりも、人も車も増えた大通り。幅のある歩道を、黙ったまま歩く。
通りすぎていく車のライトを浴びながら、課長が前を向いたまま言う。
「尾関とのことがどうにもならなそうだったら、相談しろ」
重ならない視線。
引かれたように感じた、一線。
さっきの課長の発言がどういう意味だったかはわからないけれど……これは、間違いなく〝上司〟と〝部下〟の距離での会話だった。
そこに、少しの寂しさを感じながら、課長の横顔に「はい」と答えた。