俺様上司と身代わり恋愛!?
「そう言ってるが……本当に合意だったのか?」
再度、確認するように聞いた課長に、伸介は「あ……いや」と曖昧なことを言い、私をチラッと見る。
脅してくるような眼差しを負けずと見つめ返していると、私を言いくるめるのは無理だと諦めたのか、そのうちに伸介がへらっと笑った。
「あー……もしかしたら勘違いだったかもしれないですね。すみません」
伸介は営業三課で、私たちとは課もフロアも違う。
それでも、課長が誰なのかはわかったんだろう。
そして、おおごとにされたらマズいと判断し、早々に引き下がったのかもしれない。
私にヨリを戻そうって言ってきたのだって、どうせ軽い気持ちだったんだろうし。
ここで伸介が粘ったって、伸介にいいように働くことなんてなにもないと思ったんだろう。
「すみません」と、もう一度謝り、そそくさと駐車場から出ていく伸介の後ろ姿をぼんやりと眺める。
それから、まだ抱かれたままの肩に気付いて、慌てて課長を見上げた。
「あの……すみませんでした。迷惑かけちゃって……」
そう切り出すと、伸介が歩いて行った方向を見ていた課長の眼差しが私をとらえる。
なんとなく、目を合わせているのを気まずく思ったのは、情けないところを見られてしまったから。
伸介とのことは、前から課長に言われていたことだし……そこに手まで貸してもらってしまったから。
本当に情けないな……と思いながら、目を伏せて笑みを浮かべた。