俺様上司と身代わり恋愛!?
「課長に言われたとおり、私の意思が伝わってないのかと思って、ちゃんと言葉にして断ったんですけど……聞いてもらえなくて」
自分なりに、きちんと伝えたつもりだった。
それなのに……。
「付き合っている間、散々、いいなりになってたのに今さらちゃんと言っても伝わらないのかもしれないですね。……迷惑かけてしまって、本当にすみません」
苦笑いを浮かべてから、顔を上げて……ぶつかった視線に息を呑んだ。
じっと、私を見つめる課長が、あまりに真剣な眼差しを向けていたから。
なにかを堪えるように、ぐっとしかめられた顔。
ツラそうに歪んだ瞳に、射抜かれたようだった。
時間が止まっているようにさえ思えた。
「課……」
〝課長〟と呼ぼうとした声が、止まる。
課長が、急に私を抱き締めたから。
背中に回った腕の力に、ようやく抱き締められているんだと気づき……それを意識したとたん、心臓がドキドキと騒ぎ出す。
課長の肩口に鼻から下を押し付ける形になり、微かな煙草の香りを感じて、顔が熱を持った。
大きな身体に抱きすくめられ、頭が真っ白になっていたとき。
課長が言った。
「おまえがそんなだから、放っておけなくなるんだろ。上司って立場乗り越えて、口出したくなる」
かすれた声が耳元で落とされる。
まだ、苦しそうに表情をしかめているんだろうっていうのがわかるような、そんな声に、「もっとしっかりしろよ」と言われ……その声に、胸を打たれた。
「……すみません」