俺様上司と身代わり恋愛!?


「私がどれだけダメなやつか、課長は知ってるから……こんなこと言っても信じられないかもしれないけど。
私は、課長だから、したんです」

じっと見つめていると、わずかに目元をしかめた課長に「……俺だから?」と、静かに聞かれる。
不安の混じったような、確認する声だった。

今日会ってから、初めて温度のある声を聞いた気がした。

「課長だから」と答えてから……ゆっくりと続ける。

「本当は、こんなこと言わないで、課長が忘れろって言うなら、はいってうなづいたほうが楽なんです。自分の気持ちを呑み込んで我慢すれば、今までどおりでいられるから。
今までの私だったら、そうしてました」

真っ直ぐに見つめる先。私の言葉を待っていてくれる課長に告げる。

「でも、そんなの嫌だったんです。気持ちを、呑み込めなかった。こんなこと初めてだから、自分でも戸惑ってますけど……。
笑って全部なかったことになんてできないくらい、課長が、好きなんです」

自分からの初めての告白だった。
好きだと言った途端、なぜか感情が溢れ出し涙となって目からこぼれた。

ポロポロと落ちる涙を拭いながら、もう一度「課長が、好きなんです……」と伝える。

泣いているせいで呼吸が震える。
ひたすら手の甲で拭っていると、不意に影が落ち……俯いた視界に、課長のネクタイが入り込む。

そして、無言のままハンカチを押し付けられるから、それを受け取り、素直に使わせてもらう。

その間も、目の前に立った課長が黙っているから……沈黙と緊張に耐えきれなくなり、うつむいたまま口を開いた。

「なんか、言ってくださいよ。私、今、人生初の告白したんですから」



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