俺様上司と身代わり恋愛!?
エレベーターから救出されたのは、その数分後。
「困るんですよねー。ちゃんと事前に知らせているのにも関わらず乗られちゃうと、こっちも予定通り点検が進まなくてー。貼り紙、気付きませんでした? 本当に?」
迷惑そうにネチネチと言うエレベーター会社の人に、課長とふたりで頭を下げた。
それから、一日の業務を終え、コーチャー日記を書き終わり顔を上げてふと気づく。
預金課内に、社員の姿がないことに。
高橋さんと今野さんは先に帰ったのは把握していたけれど……他の人はいつの間に……。
そう考え、そういえば、日記を書いている最中、何度か「お先に」と挨拶されたっけと思い振り向くと……。
片手で頬杖をついた課長と目が合った。
「あれ。もしかしてまたしても……」
「五分前からおまえ待ち」
課長のデスクの前に立ち「すみません」と謝りながら日記を渡す。
課長がそれに目を通しているのを眺めながら課を見渡すと、見事にみんな退社済みだった。
時計を見ると、十八時二十分。定時を一時間ほど過ぎたところだ。
今日はノー残業デーじゃないのに珍しい。
そんなことを考えていると、課長が言う。
「今週は水曜が二十五日で忙しくなるから、月曜がノー残業デーだって先週から言ってたろ」
「あ……そういえば、そうだったかもしれないですね」
言われて、思い出す。
毎月二十五日は、取引先、ほとんどの企業の給料日であり、そして、ローン関係の引き落とし日でもある。
そういう、支出の多い日は、忙しく残業なしには帰れない。
今までは、水曜日に二十五日がぶつかった場合は、しょうがないって程度で流していたんだけど……上がなにやら言い出したのは今月の頭だ。
二十五日が水曜日の場合は、その週にかぎり、月曜日にすると。