俺様上司と身代わり恋愛!?
「エレベーター会社の態度、一貫してイライラしたな」
不機嫌な声に苦笑いを浮かべてうなづいた。
「ですね。閉じ込められた人にはネチネチ言うっていうのが社風なのかなとか思いました」
「〝こっちは客だ〟って威張るつもりもねぇし、こっちが悪かったけど……あれはなぁ。ちょっとない」
「課長が偉くなったら、他のエレベーター会社に変更しちゃえばいいじゃないですか」
ふざけて言うと、課長は呆れたみたいに笑った。
「この位置でも面倒なのにこれ以上とか……考えただけで疲れる」
課長の口から出た言葉に驚いてから……ああでもそうか、と思った。
普段は、楽々こなしているように見えたって、課長職なんて大変な仕事だ。
ちょっと前まで勃発していた、今野さんと私の冷戦を気にしてくれていたみたいに、他の社員にだって気を配っているんだろうし。
新入社員であるふたりの仕事の覚え具合、そのほかの社員の任せられている仕事の進捗具合。
そういうものを把握しながら、自分の仕事だってしなくちゃならないんだから……疲れるに決まってる。
だから〝お疲れ様です〟と言おうとすると、それより前に課長が続けた。
「俺の立場で見合いだなんだって話がくるくらいなんだから、これ以上になったらさらに面倒だろ。結婚しろだのなんだの、プライベートなことに口出されんの、嫌いなんだよなぁ」
「あ。そういう意味でですか」
「他にどういう意味があるんだよ」
片眉をあげた課長に不思議そうに聞かれ「いえ。安心しました」と答えると、会話がかみ合っていないからか、課長が顔をしかめる。
それと同時に一階についたから、フロアに出ると、そこもシン……とした空間が広がっていた。
社員用通路を歩く課長の革靴の音が、カツカツ響く。
モニターを確認してから外に出ると、外はもう暗く、空には星が浮かんでいた。