俺様上司と身代わり恋愛!?
「おじゃまします……」
金曜日は、〝おじゃまします〟も言わず仕舞いだったな……と苦笑いを浮かべて上がらせてもらうと、課長がすぐにスリッパを出してくれる。
それを履き奥に進むと、リビングダイニングが広がっていた。
ダークブラウンのフローリングに、黒のカーペットが敷かれている。黒の皮張りのソファの前には、ガラスの天板のローテーブルが置かれていた。
その上に広がっているのは……いわゆる、ガンプラ。
作りかけのようで、まだまだ完成には程遠いように見えた。
ローテーブルの横には、工具箱が置いてあり、ふたが開けっ放しになっている。
キッチンを見ると、対面式キッチンの前がバーカウンターみたいになっている。
ふたつ置かれている背の高い椅子を見て、オシャレだなぁと感心した。
「ソファに座ってろ」
「あ、はい。なんか……課長っぽいお部屋ですね」
少し無機質で、でも温度もある。
やたらと生活感がなかったりすると緊張してしまうけれど、この部屋はそこかしこに課長の気配がするから、安心する。
「ガンプラ好きなんですか?」
「そこまでじゃないけどな。作ってる間はなにも考えずに済むからって理由がでかいかもしれない。没頭するには丁度いいって程度だから、できあがると置き場に困って売ったりしてる。紅茶でいいか?」
冷蔵庫を開けながら聞く課長に、「あ、はい。お気遣いなく」と答えてからソファに腰掛け、目の前のガンプラを眺める。