俺様上司と身代わり恋愛!?
「作ってる時間が楽しいって、わかる気がします。私も料理とかお菓子作りとかしますけど、大量に作っちゃったりすると、処理に困りますし」
「へぇ。おまえ料理とかするのか」
「短大のころに付き合ってた人が、インスタントとか外食が嫌いな人だったんです。だから頑張ってたら、自炊するのに困らない程度にはなりました」
「おまえはまた……そういう不憫な昔話はよせ」
呆れた声で言いながら、課長が背の高いグラスに入ったアイスティーをローテーブルの上に置く。
作り途中のガンプラを、さーっとテーブルの上から箱の中へと雑に払い落とした課長が隣に座ると、ソファの座面が沈む。
いつの間にか、スーツの上着を脱いでいた課長はYシャツ姿で、おもむろにネクタイを緩めたりするから、少しだけドキドキと胸が騒いだ。
「志田はどうした? 映画ドタキャンしてからなにかあったか?」
突然出た志田さんの名前に、そうだ、と思い出す。
「はい。今日、書庫で一緒になったから、ドタキャンの件は謝りました」
「なにも揉めなかったか?」
心配してくれる課長に、はは……と曖昧に笑って「はい」と返した。
ドタキャンを謝ったあと、正直、どうしようか少し考えた。
だって私の態度から志田さんは好意みたいなものを感じ取っていたかもしれない。
その上で、映画をOKしてくれたなら……もしかしたら、志田さんも少しは好意的に思ってくれていたってことかもしれない。
そんな考えは図々しいって思いながらも、なんとなく申し訳なさやもやもやした感情が拭えなくて黙った私に、志田さんが笑っていった言葉がある。