俺様上司と身代わり恋愛!?
『あのさ、今まで曖昧にしてきちゃったけど……よかったら友達みたいに仲良くなれないかな。同じ職場な上、コーチャーっていう同じ立場にいる茅野さんと話すのはすごく気が楽なんだ。……あ、もちろん、下心なんてないから。俺、職場で恋人を探す気はないし』
拍子抜けだった。
志田さんが私をなんとも思っていないのはいいとしても、私の好意にさえちっとも気付いていなかったのかって。
気付いていなかったから言えたんだろうけど……私がもし、まだ志田さんを想っていたら、相当なダメージを受けていた発言だなと笑ってしまいそうになったのを、我慢した。
でも……考えてみれば、志田さんとの会話で八割を占めていたのは仕事関係だ。
仕事上でのお互いの悩みを打ち明けたり、お互いの足らない知識を教えあったり……今考えてみれば、どうしてそこから恋愛に繋がっていくと思えたんだろうと思えるような、色気のない会話ばかりだったかもしれない。
志田さんの中では、なにも始まってなかった……ということを説明すると、課長は呆れたように笑った。
「志田って案外鈍感なんだな。……あー、でもそうか。高橋のあの態度で気付かないんだから、気付くわけもないか。おまえは、頭のなかは違ったとしても、態度は平然としてたし」
課長が私に視線を移し、目を細める。
「でも、よかったな。下手に気付かれてたら後々面倒だったし」
たしかに、課長の言う通りだな……と思いながら、一度目を伏せる。
それから「あの、ところで」と課長を見た。
「今日はなんだったんでしょうか」