俺様上司と身代わり恋愛!?
高級そうな和食屋さんに、軽い拉致。
課長は結構自分勝手な性格だし、それを踏まえれば、そこまでおかしな行動ではない。
でも……食事中だとか車のなかとか。会話の間とかにあれっと感じるものがあった。
なんとなく、いつもとは違う気がして……なんとなく、特別な含みを感じていた。
課長が意識して、柔らかくて優しい雰囲気を作っている気がした。
だから聞いてみると、課長はわずかに驚いた顔をしたあと、言いづらそうに表情を歪める。
しかめられた目元を見ていると、課長は目を逸らしたまま「案外、鋭いんだな」と言ったあと、小さなため息をつき、後ろ髪をくしゃくしゃとかく。
「仕切り直し……ってわけでもないけど。先週は、あまりに強引にしたから。……それの、罪滅ぼし」
先週……っていうのは、金曜日の夜のことを言っているんだろうか。
だとしたら、別に強引にされたわけでもなんでもなかったし、私だって合意だったんだから……と思い、口を開こうとすると。
こちらを向いた課長と目が合い、伸ばした手で頬に触れられた。
温かくて大きな手に優しく撫でられ、そこからじわりと熱が広がっていくみたいだった。
じっと見つめてくる瞳のなかに、それと同じ熱を感じ、誘われるまま課長の手に自分の手を重ねる。
見つめ合ったまま、少しの時間が経ったあと、課長がゆっくりと言った。
「金曜は、勢いで抱いて悪かった」
きっと、悪い意味での謝罪ではないんだと、すぐにわかった。
誠意のこもった、優しい瞳が大事そうに私を見ているから。
それが、今まで課長自身から聞いていた恋愛観とはあまりに違っているように思えて、思わずふっと笑みがこぼれた。