俺様上司と身代わり恋愛!?
「でも……クレームが出てからじゃ、今野さんだって嫌な思いするでしょ?」
「大体、名前言わないなんて、そんなつまらない事でクレーム入れてくるお客様なんていないんじゃないですか?」
「つまらない事って……それは、違うと思う。つまらないかどうかを決めるのはお客様だよ。
電話に出たときに名乗るっていうのはきちんと決められてる事だし、責任意識にも繋がる。恩田さんにも何度か注意されてるでしょ?」
名乗るのは、規則で決まっている。
恩田さんだってそう指導しているハズだ。
だから言うと、今野さんはそれには答えずに言う。
「それに電話番号だって、どうせ聞いたところで、折り返しの電話は登録してある番号以外にはかけられないんだから、いいじゃないですか。
聞いて違う番号にかけて欲しいなんて言われて、それはできませんなんて答えたら、それこそお客様が怒ると思いますけど」
「だとしても、どんな電話でも番号を聞く習慣をつけておかないと困る事だって……」
「番号聞かなくても、うちに顧客登録してあるならそれ見ればいいだけですし」
私が何か言おうとしても、言う前に潰してくる今野さんに言葉を失くしてポカンとしてしまう。
私の言うことは聞くつもりはない、というのが態度でわかり、なにも言えなくなっていると。
「短大の時、男に振り回されっぱなしでカッコ悪い恋愛しかしてこなかったくせに、先輩風吹かせないでください」
思わぬところを攻撃されて、驚く。
短大の時……?と眉を寄せると、今野さんは口の端を吊り上げて私を見た。