俺様上司と身代わり恋愛!?
「知ってると思いますけど、私、茅野さんと同じ短大出てるんです。
丸々二年違うから重なってはいないですけど、それでも茅野さんの噂はみんなしてましたよ。
ダメな男にばっか騙されるバカな女がいたって、笑い者にされてました」
「え……っ」という声が、オフィス内でいくつも重なる。
預金課にいる社員の〝マジかよ〟っていう視線を集めながら、薄笑いを浮かべる今野さんを、ぼんやりと見つめる事しかできなかった。
「何度も浮気繰り返されたのに謝られるとすぐ許しちゃうとか、彼氏とケンカになって殴られて流血して医務室運ばれたとか、水商売に売られそうになったとか……。
他にも結構言われてましたけど……本当なんですよね?」
「あ、うん、まぁ……」という私の返事に、預金課内にはさっきよりも強めの「え?!」の声がどよめく。
もう、みなさん素知らぬ顔での盗み聞きは諦めたのか、ガン見状態だ。
「そんな事もあったかも。私、ちょっと見る目なかったみたいで」
いやもうそれちょっととかじゃなくて皆無に近いだろ、っていうツッコミが聞こえそうな眼差しがそこら中から突き刺さり、笑うしかできない。
そんな私に、今野さんはため息をついた後、嫌悪感を浮かべた眼差しを向けた。
「たかが噂だし、私だってそこまで気にしてはいなかったんです。実際に、茅野さんに会うまでは」
「え?」
声をもらした私を、今野さんの厳しい視線が貫く。