俺様上司と身代わり恋愛!?
ただ、一言二言交わしただけの私がこんな気持ちになるって事は、他の女性社員も同じように感じているのかもしれない。
人当たりのよさで言えば、きっと社内の人間でダントツだ。
「茅野さん?」
「え、ああ……あの、志田さんって仕事、好きですか?」
聞きたかったのは、そんな事じゃない。
彼女がいるかどうかを聞きたかったのに、でもそんなの初っ端からする質問じゃない気がして、もっと遠回しに……と考えたら、なぜかそんな言葉が出てきてしまっただけで。
話題が唐突すぎたからか、志田さんは不思議そうにしてたけど、そのあと笑顔を浮かべた。
「そうだなぁ。まぁ、好きかな。
俺は入ってすぐの頃からずっと営業にいたから、ここに異動になった時は戸惑ったけど、融資の仕事も面白いよ。
ちょっと複雑な部分はあるけどね」
「……そうですか」
「茅野さんは、ずっと預金だよね?」
「はい。もう、三年目なので、私も来年あたりは異動かなぁと覚悟してます。
新しい子も入ってきてますし」
「うちもひとり入ってきたんだけど、俺がコーチャーしてるんだよ。
まだ融資課きて二年前なのに……。課長は、人に教える事で自分も覚えるだろうって考え方なんだろうけど、さすがにキツいかな」
「あ、志田さんもコーチャーしてるんですか?」
驚いて聞くと、志田さんが「じゃあ茅野さんも?」と聞き返す。
「はい。今回、初めてコーチャー任せられたんですけど……なかなか難しくて」
自分で担当していない子がやけに突っかかってくる上、私に教わりたくないとか言ってて……どうやら嫌われてるみたいです。
とは言わずに全部を苦笑いで誤魔化すと、志田さんも同じように笑みを崩した。