俺様上司と身代わり恋愛!?

もう、私からの直接注意は控えた方がいいんだろうなぁ。
やっぱり、気になる部分は、恩田さんに伝えるのが一番穏便かもしれない。

静かなフロアにポーンと控えめな音が響いてエレベーターの扉が開く。

「あ、つきましたよ、エレベーター」
「ちょっと待て。おまえあれ、事実だったのか？　何度も浮気繰り返されたのに謝られるとすぐ許すだとか、彼氏とケンカになって殴られて医務室運ばれたとかが？」

驚いた顔で聞く課長がエレベーターに乗ったのを確認してから、ドアを閉めて「ああ、はい」と頷くと、信じられないとばかりに顔をしかめられた。

「このあいだ言ったじゃないですか、男見る目ないって」
「それにしたって……ひとりぐらいマシな男いなかったのか？」

「私は、マシな男だと思って……っていうか、好きだから付き合ってたんだし、私は今もみんなそれほどダメだとは思ってません。周りが言うから、ああそうなのかなって思うだけで」

そう説明すると、これ見よがしに大きなため息を落とされた。

そりゃ、確かに悪い部分が目立っちゃうような人とばかり付き合ってきたけど、それぞれにいい部分だってあったのは本当だ。

言わないけど。

だって、それを言うと、〝いい部分なんて無理やり探し出そうとすればどんな悪人からだって見つけられる〟とか言われるのは、過去の経験から分かっているから。

エレベーターが小さな機械音を響かせて下降する。
順調に階を移る階数掲示板を眺めていると、不意に「今日の午後、志田と話してたろ」と言われた。