俺様上司と身代わり恋愛!?
従業員出入り口は、外からは暗証番号を入力しないと開かないシステムになっている。
けれど、中から開けるには、少し重ためな普通のドアだから、疲れてる時なんかは何も考えずスッと開けてしまいがちだけど、本来ならこうしてモニターを確認してから開けるのが規則だ。
ドアの外に異常がないか、不審者はいないか、確認してから開けないと危ないから。
本部だけの切り離された建物なら、そこまでの用心は必要ないのかもしれない。
でも、ここには営業店も入っている。
となれば、金庫だってあるわけで、その中には紙幣やら硬貨がざっくざくしてるし、ツッコんだ内容の個人情報だってわんさかある。
まだ一度も入られた事はないけど、いつ強盗に入られたっておかしくない。
だから、営業店には一ヶ月に何度か警察官が立ち寄って防犯アピールしてるみたいではあるけど……。
正直、一、二階の営業店以外は割と平和ボケしちゃってるのは否めない。
いつ強盗に入られるかも分からない建物内にいるっていうのに、私の一番の悩み事はひとりの後輩って時点で甘いんだろうなぁと思う。
「課長」
四つあるモニターが映し出すのは、ドア前を三点から角度を変えて映したものと、駐車場の映像。
それらをさっと確認しドアに手をかけながら、課長が「何だ」と返事をした。
「もしも、私の存在が預金課の空気を悪くしていたらすみません」
ドアを押して開けた課長が、ぴたりと止まって私を見るから、苦笑いを返した。