俺様上司と身代わり恋愛!?
「今野さんが言ってた事……八方美人だとかヘラヘラしてるとか。以前にも何度か周りから言われた事があるんです。
自分ではいい人ぶってるつもりもないんですけど、周りから見るとイライラするみたいで……。
友達も何人か苛立たせちゃって、離れていっちゃった子もいます」
『怒ればいいじゃん。なんで笑ってるの?』
『そういうの、見ててイライラする』
中学や高校生の頃言われた言葉が頭の中に蘇る。
その頃は今よりもずっと免疫がなかったから、いちいち必要以上に傷ついていた気がするけど……それでも、性格は変わらなかった。
いい子ぶってるつもりはなくても、何か言われたとき、気持ちのまま怒ったりできない。
私が笑ってその場が平和に終わるなら、それで、と思ってしまうのはきっと、悪い事なんだろうなぁとは思うけど。
こればっかりはそう簡単には直らない。
「だから、今野さんも私のそういう部分が見てて嫌なんだと思うんです。
それを全部私のせいって言うつもりもありませんが……でも、私のせいで預金課がぎくしゃくしちゃってるなら申し訳なくて。
課長に、一度きちんと謝っておきたかったんです」
ぺこりと頭を下げてから「色々すみません。じゃあ、お疲れ様でした」と笑顔で言ってドアを出る。
だけど、数歩歩いたところで後ろから呼び止められた。
「茅野」
振り返ると、ドアを閉めた課長がじっとこっちを見る。
外に出たせいで一気に暗くなった視界だけど、表情くらいは見てとる事ができた。
「つまり、平和主義ってだけだろ? 無駄に騒ぎ立てて大げさにするくらいなら、自分が我慢すればいいって、そういう意味だろ?」
「……まぁ、はい」
「平和なんて単語がつく言葉が、悪いモンなわけないだろ。少なくとも、俺はそう思う」
口の端を上げられてキョトンとしていると、課長が続ける。
「課の他のヤツらだって、また今野が咬みついてるくらいにしか思ってないから安心しろ。
あ、でも、おまえのダメ男履歴には興味ありそうだったけどな」
「ダメ男履歴……」と苦笑いを浮かべている私に、課長が言う。