俺様上司と身代わり恋愛!?


「申し訳ありません。田村様から電話番号を伺い忘れてしまって……」
『ずっと待ってたんですよっ、私。なのに五分十分経っても全然――』

そこからは延々と耳元で文句を言われ続けて、ひたすらに謝り続けている時に、印鑑票片手に今野さんが戻ってきた。

田村さんの言葉を聞きながら印鑑票を受け取ったけれど、電話番号はやっぱり空欄だ。

かなり古い印鑑票だし……取引内容によってはもらい直した方がいいかもしれない、と思い打ち出しに目を戻す。
取引内容は、残高を聞かれた普通預金一冊のみで残高は190円。

金額を確認して、苦笑いが浮かぶ。
恐らく田村さんは、何らかの拍子に、全然使っていなかった通帳を見つけて、いくら入ってるのか期待半分に電話をかけてきたんだろう。

これでもし残高が十万円とかだったら、機嫌もよくしてくれたかもしれないけれど、190円じゃあ……ちょっとそれで機嫌をとるのは難しそうだ。

『手元の通帳の残高は八万六千円ってなってるんですよっ。だから念のため調べてって口座番号まで教えてるのに調べるのに一体どれだけかかってるの!』

通帳上は八万六千円あるのに、実際は190円……。

記帳されていないだけでキャッシュカードで払い戻ししたからなんだろうけど……それをすぐに納得してくれるテンションではない。

これはなかなか話が長くなるかもしれない。
そう覚悟してから、受話器を握り直した。


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