俺様上司と身代わり恋愛!?
「今までも気付いた事は恩田さんにちゃんと伝えてるし、今の事も恩田さんから注意してもらうつもりだよ。
今野さん、私に注意されるのが嫌そうだからそうしてるんだけど……それも嫌だって言われても、私も困る」
話しながら嫌だなぁと思う。
今言った事は間違ってはいないと思うけど、それでも誰かを傷つけるような言葉はなかなか声にしにくいし、言った後で罪悪感みたいなものが襲うから苦手だ。
だったら、自分が我慢して今野さんの言葉を呑みこんでしまった方がよっぽど楽だ。
もっとも今野さんは私のそういう部分が嫌いなんだろうから、そう考えると歩み寄れる気がしなくて困ってしまう。
まぁでも、とりあえずは仕事さえ回れば問題ないんだしと気持ちを切り替える。
「とにかく、電話に出た時に自分の名前を言う事と、あと、相手の電話番号をきちんと……」と言ったところで今野さんが「分かってます」と遮った。
正直、今野さんがどれくらい分かったのかも分からないし、恐らく、私への嫌悪の方が大きくて、きちんとは分かってくれていないのかなぁとも思ったものの。
そこはもう恩田さんにお願いしようと決めて、ようやく伝票精査に戻った。
隣で、高橋さんがおろおろしながら私と今野さんを見ていた。
他の課も恐らく同じだろうけど、預金課では交代でお昼休みを取る。
今週は、恩田さん、今野さんが早番、私と高橋さんが遅番だ。
私が教えてもらう側だった時も、最初の一年近くはコーチャーの先輩とずっと一緒だったから、もう少しこの組み合わせでのお昼が続くと思うと、救われる気分だった。
同時に、そのうち今野さんと一緒にお昼……なんてこともありえるのかと思うとズシンと胃のあたりが重たくなった。