俺様上司と身代わり恋愛!?


「二股とか……信じられない。しかも志田さんの方が浮気相手だって話じゃない」

「なんか、茅野さんて大学の頃も恋愛関係で噂になるような事してたらしいよ。
それ、後輩に仕事中に突つかれて課が騒然としたって話聞いたし」
「えーなにそれ。イタくない?」

そんな話がロッカーの向こうから聞こえてきたから。

なんだか大きく話がずれている気はしたけれど、ここで違うと私が叫んだところで火に油だという事は分かっているから何も言うまい、と諦め更衣室を出る。

すれ違う社員全員だとかそんな割合ではないものの、歩いているとやっぱりおかしな視線は感じて……こういうの、短大ぶりだなぁと思いながら課に戻ると、ちょうど電話が鳴ったところだった。

「戻りましたー」と課の人たちに軽く言いながら電光掲示を確認すると、外線。
つまり、相手はお客様だ。

見れば今野さんが電話をとったところで、デスクに戻り椅子に座りながらなんとなく耳を澄ましていると、どうやら残高確認の電話のようだった。

きちんと折り返しの電話番号を聞いている事に気付き、この間の事をきちんと教訓にできているんだと安心する。

一応恩田さんからも伝えてくれるように頼んでおいてよかった。

きっと私が言っただけじゃ聞いてくれなかったかもしれないし、と情けない事を思いながら、高橋さんが仕上げた住所変更の書類を確認していると。

そのうちに、折り返し電話をかけていた今野さんの口調が焦りだし、そしてその電話は恩田さんに渡った後、ついには桐崎課長に回って行った。

ただの残高確認の電話で、一体何が起こったんだろう……。

そんな風に思いながら、「配慮が足らず申し訳ございませんでした」と謝る課長を眺めていると。

前の席で、恩田さんが今野さんにため息交じりに言う。



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