俺様上司と身代わり恋愛!?


「はい。志田さんとたまたま会社帰りに本屋さんで一緒になって、そのまま流れで夕飯食べただけです」
「二股とか嘘なのに、おまえそんな事周りに言われてて平気なのか?」

片眉を上げて聞く課長に、「あー……はい。こういうの慣れてるんで」とへらっと笑ってから、昨日志田さん相手にしたような話をする。

今までもこういう事は少なからずあったし、小学校の劇でもこんな事があったし、と。

だから大丈夫です、と、課長が気にしてくれている事を解消しようと笑ったのに……課長の眉はますます寄せられていて。

なんかすごい睨まれてる……と思いながら「あの……」と声を掛けると……。
はぁ、と大きなため息をついた課長が、胸元のポケットから携帯灰皿を取り出し、煙草をギュッと押し込んだ。

「あれ……課長、灰皿だったらそこに山積みになってますよ」

テーブルの上には、五、六枚の灰皿が積み上げられているからそれを指して言うと、課長は「灰払い終わったあとなのに使えねーだろ」と言い、携帯灰皿をポケットにしまう。

言われてみれば確かに、灰皿は綺麗だけど……そうか、ここの掃除担当者が掃除をしたあとだからと、自分の携帯灰皿を使ったのか。

失礼ながら、課長のことを自分勝手というか俺様な部分があるなぁ……と思っていただけに、そういう思いやる部分もあるのかと感心していると。

こちらを振り返った課長が真っ直ぐに私を見て言う。

「そんなんに慣れてんじゃねーよ」
「え……ああ、噂……?」
「事実じゃない事好き勝手言われてるくせに、それを慣れてるからなんて許して笑ってんな」

昨日の志田さんの反応とは、あまりに違う言葉を返されて戸惑う。

別に褒められたいから言ったわけでは決してなかったけれど……まさかこんな風に言われるとも思っていなかったから。

何も言えずにいると、課長ははぁ、と息をついてから再び私に視線を戻す。



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