俺様上司と身代わり恋愛!?
上司から恋愛事情を聞かれるのはセクハラだと感じ嫌がる人も少なくないなんて話も聞くけれど。
幸い、私は気にならない方みたいだ。
というよりも、相手が桐崎課長だからかもしれない。
桐崎課長と私は、例の件のおかげで少しおかしな関係だし、元彼遍歴も知られているしで隠すことなんてなにもない。
「多分……上手くやれてるとかそういう以前の話だと思います。
昨日だって結局、プライベートな話とかはほとんどしないで、コーチャー大変だねって話題で持ちきりでしたし」
噂とか気にならないの、すごいねって褒められたあとは、もっぱらコーチャー業務に対する愚痴だった。
今年初めてコーチャーを任せられたという意味で同期の志田さんとは話も合うしで、お酒も入っていないのにふたりしてストレス解消とばかりに弱音や愚痴の嵐。
恋愛に発展するような話題なんて皆無だったと気付いたのは、志田さんと別れたあとだった。
「志田さんから誘ってくれるなんてこと、もう絶対ないに等しいのに日々溜まっていたストレスをここぞとばかりに発散させちゃって……」
「これもう終わりでしょうか?」とすがるように聞くと、テーブルに寄りかかりながらこちらを見ている課長が、「知らねーよ」と面倒くさそうに顔を歪める。
「その前に何も始まってすらいないだろ。……まぁ、自分の分からない愚痴なら聞いてても時間の無駄としか思えないけど、志田は共感してたんだろ? なら、終わりってわけでもないんじゃねーの。
志田だって言ってたんだろ?」