俺様上司と身代わり恋愛!?
「はい……。なんか教えてる後輩がうっかりミスが多くて、でもあまり頻繁に注意するとその子が委縮しちゃって、余計ミスが増えるからどうしようって」
「お互い聞いた感じなら大丈夫だろ。おまえだけがずっと話し続けてたなら問題だけど」
「まさか。さすがに私だけの愚痴じゃそんな持ちませんし」
「いやー、あるだろ。俺が見てるだけでもかなりの量あるし本一冊書けそう」
ははっと笑いながら言う課長に「……笑いごとじゃないです」と言って顔をしかめていると、課長が何かを思い出したのか「あ」と声をもらしスーツの内側にある胸ポケットを漁りだす。
「そういえば、志田って彼女いるか知ってんのか?」
「え……っ、どうだろ……。ちょっとそんな込み入った話できないし、それに難しいし……」
「は? 別に特別込み入っても難しくもねーだろ。彼女いるんですかって一言聞けばいいだけだし」
「だってなんの脈略もなくそんな事聞いたら、もう好きだって告白してるようなもんじゃないですか」
これだから恋愛経験の乏しい人は、と心の中で呆れて笑っていると。
探し物は見つかったのか、ポケットから何かの封筒を取り出した課長が私を睨んでいた。
「声に出てるからな」
「えっ」
「それと、俺は恋愛経験が乏しいわけじゃない。それなりにこなしてきた」
「え、そうなんですか? あー、でも女の子が性的な意味で大好きなんですもんね……いたっ」
「語弊がある」という注意と同時に頭に落とされたのはチョップだ。
いつか同様、思い切り振り落されたわけでもないからそこまで痛くはないのだけど……上司にチョップされるって地味にびっくりするからやめて欲しい。
課長って他の部下にもこうやってチョップ落としてるんだろうか、と思いながら見上げていると、課長が言う。