俺様上司と身代わり恋愛!?
『俺はだいぶ我慢した』
「……はい」
『そもそも、俺が電話してこいって言った理由はなんだったか覚えてるか?』
課長が怒るのも無理はなかった。
でも、私がこんなテンションになってしまうのだって無理はなくて……。
だからと言って考えてみれば課長は直属の上司なんだし、こんな話をする事自体が間違っているのだから、全面的に私が悪い。
……だけど、だ。
「もちろん、覚えてます。日曜日の待ち合わせ時間を決めるため……」
『そうだ。で、おまえは今までの十五分間、一体何の話をしてた?』
「志田さんを映画に誘うまでの緊張感や、誘った時の志田さんのリアクションを事細かに話して、あとは彼女いないって聞き出せた事と、映画デートを好感触でオーケーしてくれたって事をひたすら喜んでました……」
……そう。私は今日の仕事終わりに、志田さんを映画に誘うというミッションに成功していた。
課長にチケットをもらったものの、一体どうやってどのタイミングで誘えばいいのか。
そもそも仕事中にそんな事はできないから、だとしたら仕事終わりを待ち伏せして渡すべきなんだろうけど……。
それって怖くない? 待ち伏せとか、どうなんだろう。ストーカーまがいな行動に思えるけど……大丈夫かな。
そんな風に思いながら仕事をこなしていたらいつの間にか定時を過ぎていて……。
急いで帰り支度をしてから一応、融資部の前をさりげなく通ってみたけれど、そこに志田さんの姿は既になかった。