俺様上司と身代わり恋愛!?


「こないだ恩田さんが言ってた事と重なっちゃうんだけどね。電話だと表情が見えない分、相手に声が冷たく届きがちでしょ? だから、もう少し柔らかく応対できると……」

「別に、いいじゃないですか。嫌々やろうがどうだろうが、やってる事は一緒だし、お客様が聞いた内容はきちんと答えてます。だからいいでしょ」

そう、私の言葉を遮って言った今野さんに「嫌々は……ダメなんじゃない?」と、私も顔をしかめると。

今野さんは嫌そうな表情を浮かべて、睨むように私を見た。
今野さんだけじゃなく、フロアにいる他の人たちの視線もこちらに集まっているのが視界の端で分かった。

「私がどんな心持でどう仕事しようが自由なハズです。茅野さんのは自分の意見の押し付けです。エゴでしょ、そんなの。ミスしたわけでもないのに」

ため息をつきながら「現に今のお客様だって満足してました」と言い、視線を逸らしてしまった今野さんは、もう会話を続ける気はないようで。

その様子に、チラチラと集まっていた他の職員からの視線も散っていく。

ただひとり、私の左側数メートル先にいる課長を覗いて。

サンウェルさんの事があってから、少し落ち込んでいるように見えた今野さんだったけれど、今の態度を見る限り休みのうちに復活したようだった。

それに気付いたのが私への態度でだというのがツラいなと思う。

こうして突っかかってくる様子に、うーんと思いながらもどこかで安心してしまうんだから、私も相当マヒしているのかもしれない。

だけど、それが今野さんが作った私との関係なのだから仕方ない。

左側から送られる視線を感じながら……昨日、課長がマリンタワーの展望台で話した事を思い出す。




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