俺様上司と身代わり恋愛!?
ふふっと笑う美絵から手元の御守りに視線を移してそれを眺めていると、近づいてきた店員さんが「失礼します」と料理をテーブルに並べ始める。
ひとつ、ふたつ、みっつ……とどんどんテーブルにお皿が並べられ、しまいにはテーブルのほとんどがお皿で埋まってしまう様子を見て、ああ今夜も美絵の食欲は健在だなと思う。
美絵がたくさん食べるおかげで、私も色んな種類の料理が食べられていいのだけど……周りのテーブルから集まる視線には未だに慣れない。
美絵は、まずサラダを取り分けてから、「これがおすすめなの」と言い生ハムとほうれん草のクリームパスタも取り皿にとってくれる。
そして、美絵自身はもともとクリームパスタがのっていたお皿をそのまま自分の前に持って行くけど、これもいつもの事だった。
大体、ひとつの料理の三割を私、七割が美絵という配分で食べ進めていく。
いただきます、と手を合わせてから食べると確かに美絵が勧めるだけあっておいしい。
生パスタのフィットチーネは、クリームとよく絡まっていた。
やっぱりその辺のファミレスで食べるパスタとは違っていて少し感動する。
「ところで美絵はやっぱりまだ現実の恋愛には興味ないの?」
フォークにくるくると巻き付けながら聞くと、美絵は口元を手で隠しながらキョトンとした顔で頷いた。
「うん。ちっとも」
「余計なお世話かもしれないんだけど、そろそろ現実にも付き合ってみた方がよくない?
なんかずっと二次元ばっかに浸ってると、どんどん理想が高くなっちゃって誰とも付き合えなくなりそうな気がして」
「ああ、それなら大丈夫。現実と理想が違うなんて事は分かってるし、第一結婚したって二次元に萌えてればいいんだし、相手になんてそういうの求めないもの」
ハッキリと言う美絵に、一瞬それならいいのか……と納得しかけて考え直す。