夜の図書室で
「なにかしようとしたけど、やめたような……」


 不意に、ナナちゃんが言いだした。


「まあいいやって思ったのよ。うん、そうだよ」


 と、少しだけ思いだしたのか、ナナちゃんの眼が輝きだした。


 でも、すごくぼやーっとしてる。


「なんかしようとして、やめた? 漠然としてるな……」


「あたしにとっては大事なヒントよ。重要な手がかりよ」


 僕の言い方がクレームに聞こえたのか、ナナちゃんは少し怒っていた。


 そう言われても、僕はナナちゃんがなにか思いだしてくれないと、どうしようもない。


「なんかこう、思いだせるように……。再現してみる、とか」


 思いつくまま言ったあと、自分の発言の残酷さに気づき、言うのをやめようとした、が、全部言ったようなものだ。
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