夜の図書室で
 自分の最期を思いださなきゃならないのって、どれくらいの精神的苦痛なんだろう。


 生きている僕にはわからない。想像しようにもできない苦痛だ。


 すっとナナちゃんは立ちあがり、窓のほうに顔を向けた。


 あっちに行くつもりだ。


 意を決した表情だった。でも、その目つきには、かすかに不安が出ているような気がした。


 そして、一歩窓に向かって歩み出した。


「あっ」


 ナナちゃんが声を出した。でも、なにか嫌な記憶がよみがえったのか、黙っている。


 やっぱり、しないほうが良かったんじゃ……。
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