夜の図書室で
「あたし、『相棒』が好きだった」


「……え?」


 ドラマ?


「なんでいま思いだしたんだろう。好きだったのよ。よく見てたなぁって、思いだした」


 ぜんっぜん関係ない記憶が出てきたらしい。


 そっか、『相棒』なら僕も知ってるよ。とかなんとか、ナナちゃんみたいに明るく言えば、少しはなぐさめになるだろうか。


 いや、やめておこう……。落ちこんでるよ。


 ナナちゃんは両手で頭をかかえ、髪の毛のなかに両手の指先をすべりこませながら、ナナちゃんは頭のてっぺんを僕に見せるようにして、机につっぷした。


 あ、血が見えるかも、と僕は顔をそむけ、視界にナナちゃんの後頭部が入らないように目の前から窓のほうに視線をそらした。
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