夜の図書室で
「もうやだー、このままだとずぅっと教室にいるかもしれないなんてやだー、絶対やだよー」


 子どもが、お化けが怖いよー、って怖がっているみたいだった。
怖いのは君が見えている僕のほうなんだけどな。


「芹沢くん、助けて……」


 助けて。声が、必死で、切実で、僕はなにも言えない。


 表情は見なかったけど、声だけでも、伝わってくるものがあった。


 助けようにも、僕にできるのか。もし、なにもできなくて、ナナちゃんは天国に逝けないままになってしまったら……。


「もしなにか大事なこと思いだせたら、芹沢くんがしてほしいことしてあげるよ。ひとつだけ」


 なにそれ。交換条件。


 ちょっと待て。幽霊にしてほしいことってなんだ?


 教室が静かになった。
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