夜の図書室で
 ナナちゃんから視線をそらし続けていると、窓の向こう側にある空が目に入った。


 飛び降りたときも、こんな風に教室にいて、一人で、死んでいったのか。


 なんだか、胸がしめつけられたよ。


「ないの? 見返りなしでいいの?」


 なにも言わない僕に、ちょっと驚いた声でナナちゃんが聞いた。けど、いきなり幽霊に「なにかしてあげる」と言われても思いつかない。


「思いつかないから、今日は帰るよ。ちょっと考えさせてよ」


「わかった。じゃ、またね」


 またね、と言われて、僕が前を見ると、そこにいるはずのナナちゃんはいなくなっていた。
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