夜の図書室で
 さっきから僕がナナちゃんの質問になにひとつ答えてないのに、僕がどう思ってるか、気にならないの?


「あたしとしては、話し相手ができるから、それもいいかもねー」


 人が黙り続けているってことに、この雰囲気に、僕の表情に、なにかしら感じとれよ。


 笑えないんだよ。


 僕は少しだけナナちゃんをにらんだ。気づけよ、と気持ちをこめて。
すると、ふざけていたナナちゃんは、真顔になって、


「怖い。そんな顔しないでよ……。なんかあったの? 今日はやさしくないね」


 と、僕を怖がっていた。


「やさしくない?」


「うん」


「やさしさ? そんなものはとっくの昔に行方知れずになったよ」
< 57 / 108 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop