夜の図書室で
 人にやさしくされる以前に、教室に存在しているものとして扱われているかどうかも怪しい。それほど僕は人と話さない。積極的に話しかけてくる人もいない。まあ、コミュニケーションをとろうとしない、自分にも原因がないわけではないけど。


 などと考えていたら、ナナちゃんが「ふっ」と笑った。


「なにかおかしいこと言った?」


「行方知れずって。かっこつけてんの?」


 なに言ってんの、とナナちゃんは言いたいらしいが、僕は気にならなかった。だから気にしない。幽霊に笑われたって、僕はとりあわない。心が広いので。


 それでも、ふと思った。


 耐性があったらなぁ。


 嫌がらせなんて、気にしないでいられたら、いつか嫌がらせしたやつが「こいつ、無反応だな」とつまらなくなってやめる……、いや、やめなかったな、実際は。
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