夜の図書室で
 やさしさもなにもあったものじゃない。


「このクラスの人たちの冷たさに比べたら、芹沢くんはやさしい人だよね」


 いきなりほめられた。


「芹沢くんみたいな人が同じクラスだったら、あたし、話しかけてたかもしれない」


 ほめられて悪い気はしないけど、いまのは少し、切ないような。


 気まぐれに、思ってもいないことを言いたくなったのかな。


 僕が素直に喜んだら、それを見てなにか言おうと思ってるのかもしれない。


「やさしい人ねえ。ナナちゃんって、理想のタイプがやさしい人なんじゃない?」


 からかわれる前に、少しだけ、軽めの先制攻撃。


「好きな人が、白馬に乗ってやってくる王子様、みたいに思ってるんじゃないの?」


 いるわけないじゃん、いないいない、白馬の王子様なんて、と続けようとしたら、


「あー」


 と、急にナナちゃんが声を出した。
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