素直になろう

「京香、今日は寝かさないから覚悟してろよ」



ああ、もう頷くことしかできない。
私は手を引かれながら、先を急ぐ樹を追いかけた。



「やっぱり、相田陵介と別れろよ」

「あれはゲームだって」

「本物の彼氏がいるのに擬似の彼氏なんかいらないだろ」


うーん、まあ、そうとも言うのかもしれないけど。ああいうのは、生身の人間には言えない、俺様胸キュンフレーズを言ってくれるのがいいのであって…


「じゃあ、樹が俺様なかっこいいセリフ、代わりに言ってね」

あ、驚いちゃってる。フフ…


「いいよ。ベッドの上でなら、いくらでも言ってやるよ」



ああ、こいつ本気だな。
じゃあその気持ちに免じて、ゲームはやめてあげよう。
まだ会員登録したばかりだったけど。



右手の温もりも感じながら、やっぱり本物の人間っていいな、と当たり前のことを思った。