恋することを知った恋
黒瀬先輩と湧太先輩は、自分たちの方へと歩いてくるあたしを微笑んで見ている。
なんか。
条件反射というか、別に嫌なはずはないんだけど、嫌だと思ってしまうような気がして。
男の人はすぐに裏切るってイメージが根強くあたしの中に残っていて、いくら恋をしているといっても、いざ本人の前に行くとなればそのイメージがあたしの邪魔をする。
あたしは極力目を合わせないようにして、麻奈美の傍に立った。
「よろしくお願いしまーす」
麻奈美はあたしの肩を組んでそう言うと、先輩たちに明るく笑った。
麻奈美みたいに笑えないあたしは、目を合わせないまま素っ気なく頷いた。