恋することを知った恋

「杏里ちゃん、よろしくね」

鈴乃さんがあたしを見ているのが、視線を落としていてもわかる。


嫌だ。


嫌な人と、関われるほどあたしの心は広くない。




あたしはそんなに大人になれない。




「…はい」

あたしはそれだけ言って、そっと立ち上がった。

「すみません、あたしこのあと用事があるんです、失礼します」

バックを持って、席を離れる。

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