恋することを知った恋

驚いて黒瀬先輩を見ると、黒瀬先輩も笑ってあたしを見つめていた。


「あ、ピッタリ重なった」


黒瀬先輩はあたしの頭を2回程撫でて、それからそっと手を離した。

――頭を撫でられたかもと思っていた、あのとき。

そのときの感覚と、本当によく似ていて。

あのとき本当に撫でられていたかはわからないけど、あたしの胸にはあたたかい何かが触れた気がした。


「…あたし、ずっと恋をすることに怯えていたみたいで」


あたしは波を見ながら、再び口を開いた。
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