恋することを知った恋
「…うん」
黒瀬先輩はあたしを見ながら、話を聞いてくれる。
「自分ではそれに気づかなくて、気づけば人を好きにならないように自分で自分にブレーキをかけてて…」
小さな声だけど、でも一音一音を大切にして話す。
今まで黒瀬先輩に伝えてきたどの言葉よりも、気持ちを込めて。
「うん」
黒瀬先輩は何も言わずに、ただあたしの話だけを聞いてくれる。
「だけどあたしは気づけたんです、どんな状況にあったとしても、恋することは悪いことなんかじゃないって…傷ついてしまうこともあるけど、その気持ちを抑える方が苦しいんだって…気づけたんです」