恋することを知った恋
そう。
あたしは黒瀬先輩に抱きしめられて。
その優しさと、言葉を伝え切った安心感があたしにまた涙を流させた。
「桐原、俺の話も聞いてくれる?」
黒瀬先輩に抱きしめられたまま、あたしは頷いた。
「…俺は、桐原みたいな子に出会ったのははじめてだったんだ、素っ気なくてサバサバしてるし、なんだかちょっと無愛想な感じがして」
黒瀬先輩の言葉は、あたしの耳元でそっと呟かれる。
波の音は小さくなって、ただ黒瀬先輩の声があたしの身体中を駆け回って。