恋することを知った恋

「…あたしは優しくないです」

あたしが涙を拭きながら小さな声でそう言うと、黒瀬先輩は笑った。

あたしのことを離して目を合わせる。

あたしの顔は、きっとぐしゃぐしゃ。

こんな顔見られたくないけど、でも黒瀬先輩の瞳にはいつも引き寄せられて。

笑顔の黒瀬先輩は言う。



「俺が桐原のこと優しいと思ってるからそれでいい」



――反則だと思う。

でもあたしもずっと、その人のイメージの良し悪しを決めるのは自分次第だと思ってきた。
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